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            メール・マガジン

       「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第022号        ’99−11−19★

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    事例研究:「日産自動車」

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●1兆円のコスト削減を目指し、

 

日産自動車が2003年3月までに生産力を30%削減、そのために国内5工場

を閉鎖し、グループ全体で現在人員の14%にあたる2万1千人を削減、調達・

購入先も現在の1145社を600社に絞る。

 

フォーク・リフト等の産業機械事業部、ロケット・システムの宇宙航空事業部門、

船舶のマリン事業など、本業でない部門の売却。 関連約1400社の保有株式を、

4社を除いてほとんど全て売却、、、

 

という壮大なリストラ案「リバイバル・プラン」。 一方で「ルネッサンス」とも

称しておられるが、血の池から這い上がって何とか生き残ろう、、の壮烈な感じ。

 

でも、それで生き残れたとしたら、ゴーンさん、あんたはスゴイ! いや、そう

じゃない。 これまでの経営陣が、よほどダメだったんだワ。

 

「再建計画」の成否は先のこと、取りあえず<何がダメだったか>くらいは報道

の断片からも見当をつけることが出来ます。 問題解決を志すからには、学べる

ものは何でも拾ってイタダキにする、、 そんな姿勢が必要ではあるまいか、と。

 

 

新聞第1面に出れば「衝撃的!」。 しかし、以来ひと月、わが民族の順応性の

良さか忘れっぽさか、もうマスコミ材料ではなくなってしまったみたい。

 

むしろ「右へならえ!」の国民性、いや、実は一番手を務めて非難・批判を浴びる

のが怖くて待っていた卑怯な他企業が、これ幸いとばかり次々大規模リストラ案を

発表。 それが日産自動車の<衝撃>を<緩和>してしまった趣きでもあります。

 

つまり我が国、ほとんどみんな血の池地獄、、 これからも問題は増えるばかりで

しょうから、<解決人>の需要は高まるはず、、 こりゃ大いに希望が持てますな。

まあ、何事にも<明るい面>はあるんですな。 心に太陽を持て!!、、かな?

 

*   *

 

「計画」によってネガティブな影響を被る人々の心中は察するに忍びないが、一方、

当の日産自動車社員を含め、<驚かない人>の方が絶対多数なのに私は驚きました。

しかしそれは、同情心が足りないから、ではない。 話を聞けば、すぐ分かります。

 

たとえば、 ・遅すぎた。 「黒船」に頼るなんて、、、

      ・規模は予想の範囲だから、驚きは無い

      ・「計画」の実行が日産の優位転換を意味しはしない

      ・とにかく売れる車を出すことが必要

      ・経営陣は「2万人」に道義的責任を感じるべきだ

      ・ゴーン氏はこれでも相当に遠慮している

など、まあビジネスライク。 誰の目にもすでに明らかだったようですな。

じゃ、何故<すべきこと>をしなかったんだ???

 

*   *   *

 

たまたま「計画」発表の日、東京モーター・ショウのため来日したGMのCOO

リチャード・ワゴナー氏は、GMで赤字が続いたらどう対策するかという問いに、

「調達費用を下げ、コスト競争力をつける。ビジネスをあらゆる側面から見直す」

と。 つまり、問題解決に安直な近道は無い、ということ。

 

日産自動車はアタリマエを実行していなかった、それが良くなかった、に尽きます。

で、何が<実行されていなかった>のか。 <断片>を拾い集めてみましょう。

 

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●新しく日産自動車COO

 

(そんな役職、前は無かったんでしょうけれど)に就任したゴーン氏は、どうやら

その<アタリマエを実行する人>のようです。 来日した時、空港で「自信は?」

と報道陣に問われ、「無ければ来はしない」と即答。 「何を言うか?」の表情。

 

 ▲これまでの役員さんたち、そういう自信で就任されましたかな?

 

実際、ルノー社の上席副社長として腕を振るい、「コスト・カッター」、「コスト・

キラー」と書き立てられた。 その一つ、ベルギー工場閉鎖では3千人が職を失う

ことになり、暴動が起きたそうで。 今回の規模はそれに数倍するわけだが、そこ

までの騒ぎはあるまい。 平和国家日本、労使協調日産自動車。 ゴーン氏楽勝!?

 

 

彼の来日以来を取材したTVルポを観ました。 一口に言って、「働き者」ですな。

車での移動中も資料に取り組み続け、持ち時間を100%、仕事に捧げていること

が一目瞭然でした。 ずっと密着していたが、メキシコ工場へ飛んだ時に1度だけ、

飛行機の席で眠る姿をカメラに収めることが出来た、という画面/解説。

 

 ▲漫然としたところが全く無い。 全身全霊的な姿勢に< for WHAT >を漂わす。

 

日産本社での行動も直接的。 自ら次々面接して会議出席メンバーを選ぶ。会議室

には誰よりも早く入って、席の配置や設備類の機能を自ら点検する。 当然、発言

もリードするし、質問は鋭い。 しかし、「売れる車を、無駄を省いて作ろう!」

で貫き、半端な妥協は無い。 雰囲気はキビシイが、姿勢は常に encouraging !

 

 ▲自分が招集した会議なら、自分の話が通りやすいように環境を準備するのは誰

  のためでもない、自分のため。 また、そこでの討論を充実させ、しかも決議

  を現実化するには、メンバーに恵まれる必要がある。 そのため事前に、自ら

  個別面接を行ない、資質ある者を選抜する。 すべてアタリマエの実践!

 

<邪推>かも知れないが、画面の様子から推測する限り、これまでの経営陣がそこ

まで「自ら」やっていたとは思えませんでした。 いや、それは日産自動車に限る

まい。 「やれ!」と言う人はどこかにいるかも知れないが、自分では、、、ね?

 

*   *

 

工場へ出向いても、あらかじめ準備されたコースには無関心。 自分の心が向く先

へ、ズンズン足を運ぶ。 職工(これ、一太郎Lite で入力しているのですが、何と

「しょっこう」では「燭光」しか無い。 ああ、工業日本もすでに辞書的には壊滅

したのだ!)たちに直接話しかける、質問する。 自分の必要を自分で満たす。

 

 ▲彼らのいわく、「ここで働いていて、こんなこと初めてです。」 どうやら、

  これまでの経営陣、 MBWA 即ち Management by Walking Around なんて

  こと、ご存じ無かったらしい。 知ってはいたがしてはいなかった、のなら

  そりゃ怠慢ですぜ。 良くない実状を、自分の目で見るのが怖かったのかね?

 

  製造担当の役員か部長かの報告を聞いて、「ワカッタ、ご苦労」で済ませて

  いたのではあるまいか。 たまに質問も発したろうけれども、理屈と膏薬は

  どこにでも、、、 学校秀才たちがホントを言うものか。 塙社長の言葉に

  も「他責の文化」とある。  私のせいじゃないよ、が社風?とは、、ね!

 

*   *   *

 

ゴーン氏が特に指摘したのは、設備の遊休状態。主力工場だというのに、あれも

これも動いてない! 自分の目でそれを見たら、誰だって(まともなら)何とか

しなくちゃ、と思うはずだし、思えば少しは知恵も浮かんだろう。 これまでの

トップの無策は、その場所へ足も運ばないという横着さの故、と言えるでしょう。

 

 ▲知るだけなら、各種の経営指標でも足ります。 しかし、それは「知った」

  のであって、「ワカッタ」のではない。 「ワカッタ」人は直ちに行動する

  もの、そして断固たる行動は、強い感情から生まれるものです。 その強い

  感情(何とかしなくちゃ!)は、自分の目で見ればたちまち生じるものです。

     だから何であれ、マズイ時は、とにかく見に行かなくちゃダメですよ。

 

  形式的知性の人が上に立つと、ダイナミックな経営にはなりにくくなるもの。

  トップは「ワカッタ」つもりではいたろうけれど、断固たる行動なしに何年

  もを過ごしてしまった。 それでは誰の目にも「遅すぎる」。

 

  何せずにいても給料日は来る、なんて思ってちゃイカン! という常套話法

  もあるが、どうもこの会社では、上からして「来る」と信じていたらしい。

  この数期の役員さんたちが、賞与や退職金を受け取っていたとすれば、、。

 

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●悔しそうに「黒船」なんて

 

言う必要はありません。来て頂いたのだし、来てくれなかったら、もっと傾いて

いただけなのだから。 自由化、規制緩和、、、我々自身に必要なことがいつも、

この国自体の努力でなく「外圧」で達成されるのが常でした。 政治の世界でも、

こちらから策動して外圧を呼び込んでおいて、国民や業界には「やむを得ず」と

説明して通す、、、 実は国中、「他責」文化だらけなんですよ、ね。

 

 

ゴーン氏は身のこなし、目の配り、疲れを知らぬ働きぶり、業務への献身、どの

部分を取っても良い手本になるお方、、、だということを認めるに吝かではあり

ませんが、下は上に倣うもの。 これは洋の東西を問わないようですな。

 

別のビジネス・ニュースで伝えられた話。 ゴーン氏が引き連れて来た30人ほど

のルノー派遣管理職たち、大変な勉強家揃いで、実によく本屋さんへ足を運ぶそう

ですよ。 おもとめになるのは日本語の本ですかね? つまり、漢字も読める?

 

*   *

 

それよりビックリなのは、彼らの奥さんたち。 ご亭主に単身赴任などさせない。

そして一緒に来日しただけでなく、本国でもそうしていたように日本でも、、と

仕事を捜したそうで。 高学歴、マルチ・リンガル、専門的な実務能力を持ち、、

の彼女らに合う仕事が、、 さて困ったことに、見つからないのだそうです。

 

どうも未だ、その点では「発展途上国」ですからね、この国は。 申し訳ない。

しかし勇将の下弱卒なし、そこまで一貫徹底するものなのですね。 日本人は

働き者、だなんてことはもう通用しません。 彼らの意欲を見よ、ですぞ。

 

 ▲しかし、こういうのがグローバル・スタンダードなのだとすると、これから

  の管理職たろうとするには、、、 いや、大変ですなあ。 しかし、それと

  闘う、それと手を結ぶ、いずれにしても水準の大幅引き上げが必要です。

 

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●ルノーからの派遣者たち

 

が何故そう熱心なのか? それを解く鍵は、(前回説明済みの) MUST と WANT

にあります。 その立場にいる者としての「譲れないこと」と「可能な限り良く

達成すべきこと」を、一人一人、明確に意識しているからだろうと思います。

  

欧米人の場合、幼少時代から「自分はこんな仕事をしたい」がハッキリしている

人が多く、それに必要な勉強をどこでするか、どんなキャリアが大切か、を念頭

に置くのはきわめて普通のことです。 しかるべき水準の生活を営んでいる人に

質問してみれば、すぐ分かる。 逆に、それが不明確だと、上には立てない社会。

 

 

まず、自分に課しているテーマが明確です。 たとえば「ルノー社で、海外生産

担当の管理職になる」と決心すれば、ただちに「そのための方法の選択」という

課題が浮かぶ。 その「方法」はいくつかあるだろうけれど、そのどれを選ぶに

しても、必要な知識や技能、期待する時期、そのための投資額、修得すべき学業、

積んでおくべき実務経験などは共通。 それを思いつき次第、並べ放題、出す。

そしてそれらを、適切な表現で MUST や WANT とする、、、と想像して下さい。

 

次は、それら一式を手がかりに、たとえばどんな大学のどんなコースを、という

案に結びつける。 各大学の情報を集め、MUST と WANT に突き合わせて有利性

を評価すれば、進むべきコースを決めるにも迷いが生じない。 だから、速い。

 

日常の行動が目標への直線上からはずれていないか、も MUST や WANT と照合

すれば容易にチェックできる。 もちろん、「マイナス影響」まで見ておくこと。

 

こんな具合に、<考える手順>が身に着いていると一事が万事、次々テキパキ、

しかもしかるべき根拠に基づいて処理できる、説得力も生じる、、、でしょう。

 

*   *

 

行動の目標が定まった人は、目も輝くし、姿勢も積極的になる。颯爽たる外観は、

そのように内面から固まって行くのです。 ゴーン氏が日本側の諸氏に比べて力

強く見えるのは、一口に言って内面の出来の違い、当然です。

 

我が国の場合、早く言えば、ハッキリした目標も無いままに高校を終え、入れた

から入ったという大学で実務にはほとんど役立たない講義を聴き、(または眠り、

あるいはサボり、)その延長でワケワカラズに就「職」ならぬ就「社」をする、、、

そんな人があまりに多い。  (私はそうじゃなかったけれど。)

 

その曖昧さを「ご縁」だと正当化するが、心には常に満たされないものを抱く。

だからろくに勉強もしないし、仕事もお座なり、、で、ある日、「黒船」と対面

することになり、格差に愕然とする、、だろうと思いたいが、まったく不思議な

ことに、泰然としていらっしゃるんだな。 TV画面では、そう見て取れました。

 

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●日産自動車という会社

 

について、私は直接的には知りません。 が、某自動車部品メーカーでの研修で

講師を務めた時、面白い話を聞きました。 それは決定分析の実務作業を終えて、

受講者の質問を受けていた中でのこと、「日産のタラは MUST なんですよ」と。

 

一瞬、「え、タラ? 漁業じゃないぜ」。 その意味をただすと、「日産さんとの

商談で<こうしてくれタラ、、>とか<あの部分が〜だっタラ、、>と言われる。

その表現が WANT なのでつい油断させられるが、それをウッカリ軽く扱うと、

あとで叱られることになる。 だから MUST にしておく方が無難」だった、と。

 

 

それを別の(これは素材メーカーでしたが)研修先で、実務作業のテーマとして

自動車関連が出たのに便乗して確かめたところ、「その傾向、大いにあり」の答。

そこでは、そのついでに比較対象としての(自動車メーカー)H社が話題になり、

「あそこは逆に、WANT でしかないことまで MUST 、 MUST 、、と言う」とも。

 

「そのような社風の反映か、日産車の設計は冗長性が高く余力十分、H社は常に

ギリギリを狙う。 それが回収問題の頻度にも、、」(まあ、昔のことですが)

という差になって現われているようだ、など余談を聞くことが出来ました。

 

 ▲ちなみに、日産自動車もKT法の我が国到来初期のユーザーで、技術系を

  主体にして研修を重ねた、と聞きました。 そして、H社も同様、KT社

  にとっては最初の大々的かつ徹底的ユーザー。 「H版KT法テキスト」

  まで制作し、社内インストラクター数十名を養成して、、という積極性。

  それは未だ、私がその技法の存在すら知らなかった頃の話ですが、、。

 

*   *

 

察するに日産自動車は、まろやかな表現の好まれる、ハゲシクない会社、、なの

かも。 その印象を、最近同社から転じてEM法の同僚となった人に確かめてみ

ましたら、やはり当たり!  それは別の形でも証明されています。 たとえば、

 

日産労組の一部に「組合が経営側と闘ってこなかったツケが回って、、」という声

があるそうで。 委員長はその批判に対し、「協調路線を、、御用組合と言われる

筋合いは全くない。、、、鉢巻きをつけて赤旗を振るだけの労働運動は何の意味も

ない」と。 そう思います。 しかし、<闘わずに済んでいた>ところがポイント。

 

即ち、長らく経営側がドラスチックな手段をとったことが無かった、ということ。

それを今回「黒船」さんにお願いする始末になったわけですが、「協調路線の、、、

御用会社」に終始しすぎていたのではあるまいか?  まろやかですなあ!

 

*   *   *

 

7人に1人がサヨナラ、とはキビシイが、6人は残っていられるのだから、未だ

ハゲシすぎはしない。 その「1人」にもしかるべき額の退職手当が支払われる

のだから、ヒドすぎる話ではない。  未だ十分恵まれていらっしゃいますよ。

 

いや、恵まれた状況に到達したが故に、国内生産が引き合わなくなったのです。

「再建計画」の「海外生産拠点温存」がその証明。 日産に限らず、そうなること

は誰にも分かる、、とすれば、「恵まれ方」にふさわしい働き方を、各自が工夫す

べきでした。 会社も組合も、その方向に、すでに歩んでいるべきでした、、、

 

「方向」の一つはたとえば「ノレッジ・ワーカー」。 さあ勉強しなくちゃ、、、。

で、皆さん、ずいぶん本も読むようになっていた、かな? だったら今、ルノー

からの派遣者たちの本屋通いに感心する必要もないはずなんだが、、、。

 

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●今回のニュースに<驚かなかった>人が言う

 

「予想された範囲」とは、誰の目にも設備過剰、人員過剰であったという意味。

地球規模で考えると、日産全体が今日消滅しても、車の不足が生じて大変な騒ぎ

になることは無いでしょう。  たしかに、誰も驚いたりしません。

 

 

日産自動車はそれなら、誰にとって必要であったのか、いや今も必要であるのか?

オサライしてみた限りで極言すると、どうやら第一には、そこで働いている人々

にとって、らしいことがお分かりでしょう。  当然です、生きて行くために。

 

しかしトップや管理職がそれではサビシイ。 「会社」というものの第一の存在

目的は、製品やサービスの提供で「あるべき」なのに、自分たちが生きて行くの

を先にするとしたら、、、ね。  これは<かけ離れ>、即ち<問題>です。

 

*   *

 

売れない商品を、低い稼働率と高い人件費で、、でオカシクならなかったら、その

方がオカシイ。 たしかにゴーン氏は働き者でいらっしゃるが、逆に言うと、これ

までのトップが甘すぎただけではあるまいか。 今から反省したって遅いけど。

 

   A good archer is not known by his arrows but his aim.

   射手の腕前は、矢ではなく、狙いで分かる。

   

武器が良くても、狙いが悪くちゃ、大した獲物は無いでしょう。 立派な頭脳を

お持ちであったろう(これまで37人もいたと報じられた)役員さんたちに一度

お尋ねしたい。 どんな MUST 、どんな WANT を掲げてリードなさっていたのか?

あなた方はその当時、KT法をちゃんと勉強なさらなかったのかね?

 

技法が必ず役立つわけでないことを証明して下さったとは、まことに遺憾です。

                             ■竹島元一■

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